だけど僕は鳥になる

472 :467(1/2):2007/04/12(木) 20:07:25 ID:NdfWv7Ez
 あとちょっとってトコでバイト数オーバーして2分割になった。悔しい…ビクビク。
 そして「だけど僕は鳥になる」は言わせられなかったww負けたw
 一応素材は全部入れたことは入れたけどそのまま使えてないし敗北感満載。
 勝手に微妙な貧乏にしてごめん古泉。

 「だけど僕は鳥になる」(強い義務感 悪玉菌 開けっぴろげの物欲 丸くて赤いアレ)

 「いいよなあ、古泉は」
  いや、俺は別に古泉の顔が羨ましいとか身長が羨ましいとか成績が羨ましいとかそういうことを言
 っているのではない。確かにかなり羨ましいがそういう意味ではない。
  いつ見ても奴はこともなげに財布から札を出してみせるのだ。それも俺の月の小遣いの1/3が
 吹っ飛ぶような金額でも顔色一つ変えやがらねえ。そりゃ自活してるらしいからある程度は融通が
 利くんだろうが、それにしたって高校生としては理不尽な余裕っぷりである。忌々しい。
  この前の日曜も平然と、遅刻したわけでもないのに5人分の飯代をぽんと出してニコニコ笑ってい
 やがった。ハンサムがさらっと笑顔で飯をおごる図ってのは実に憎たらしいほどよく栄える。
  だから俺は古泉が羨ましいのだ。ああ、確かに顔とか身長とか成績とかもちょっとは関係あるが、
 主に金が羨ましいのであり、いっぺんでいいから朝比奈さんにちょっと小粋なプレゼントのひとつも捧
 げてみられるような懐具合の余裕がほしい、そういうことだ。
 「そう見えますか。でもそうでもないんですよ…」
  ところが奴は苦笑してしかも否定しやがった。忌々しい。こいつの経済事情を見て羨ましいと思
 わない高校生なんぞいるものか。
 「僕は夏休みにアルバイトをすることもできないんですよ」
  しなくていいじゃないか、この金持ち野郎め。おい何だ何故そこで真面目な顔をする、顔を近づ
 けてくるな息がかかるだろ!
 「……では言いましょう、あれは経費で落ちるんです!」
  経費?
  経費というとあれか、サラリーマンとかが領収書貰って会社に提出すると金が貰えるというあれだな?
  って何の経費だ何の。
 「涼宮ハルヒの接待費、とでも言いますか」
 「…ああ……」
  意味はわかるが接待ってお前。なんかもうバイトとか少年エスパー戦隊とかってより限りなくサラリ
 ーマンだな。そりゃ雰囲気が老けもする……って、じゃあつまり、お前の個人的な小遣いとかはない
 ってことなのか。
 「ありません。一切ありません。そりゃあ、家賃に光熱費通信費は自分で負担しなくていいですし、
 当然学費も機関持ちですし、支給される食費を切りつめればボードゲームやカードゲームくらいは
 月に1つぐらい買えますよ、でもそれじゃ、電源の必要なゲームのハードだとか、CDとかDVDとか、そ
 ろそろこの携帯飽きたなあとか、トレカの大人買いとか、そういう個人的なのは無理なんです! エ
 ロ本一冊買うのにも必死なんですよ! どうですか、これが本当に羨ましいですか…!!」

473 :467(2/2):2007/04/12(木) 20:08:22 ID:NdfWv7Ez
  わかった、羨ましくない、俺が悪かった、悪かったから肩を掴むな痛いって! お前どんだけ必死なん
 だよ! 物欲全開じゃねえか。っつかトレカの大人買いしたいとかどんだけ非電源ゲーム好きだ。そりゃ
 普通のバイトしてる高校生でもできんだろう、もうちょっと待て。っつかお前エロまで非電源か。まあレン
 タルは年齢制限かかるしパソコン買えそうにもないもんな、その財政事情じゃ。
 「…普通のバイトとか、やってみたらどうだ?」
  どうせスマイル売るならSOS団でよりファーストフード店のレジ時給700円での方がいいだろうしな。
 「レジの店員が突然電話一本で店を飛び出したら、まずクビでしょうね」
 「いっそ今やってるバイトの方をやめるとか」
 「……そうですね…それもいいのかもしれません、実家に帰ってね。でも…」
  あったのか実家。そりゃあるか……。表向きどういう事情で家を出たのか気になるが、まあ機関のや
 ることだからもっともらしい理由がついてるんだろうな。
 「でも? いいだろ、全部放り出したって別に」
 「正直なところ、あなたのおっしゃる通り、全部投げ出して普通の高校生をやりたいと思うこともあります
 けどね。だけど僕は……」
  窓の外に広がる夕焼け空を飛ぶ鳥の群れを目で追って、古泉は苦笑した。
  そういえばあの時も夕方だったな。昼も夜もあんまり関係なさそうな、抜けるような青空だろうが夕焼
 けがきれいだろうが曇天模様だろうが代わり映えのしなさそうなあのモノクロ空間に初めて連れ込まれた
 時も。
 「…だけど僕のやっていることは、僕たちにしかできないことですから、やめるわけにはいきませんね。人数
 もそう多くはない、一人抜けるだけでも痛いんです」
  あの丸くて赤いアレになって神人と閉鎖空間で戦うのが、か。なんつーか、義務感強すぎないか。もっ
 とこう、普通に怠けるとか…無理なんだろうね、こいつにゃ。なんだっけか、わかってしまうんだからしょうが
 ない、だっけ?
 「そっか…。なんつーか、俺には何もできんが、その、がんばれよ」
 「ありがとうございます、がんばりますよ。僕らは悪玉菌と戦うビフィズス菌みたいなものですから」
  相変わらずこいつは例えがおかしい。ニキビ治療薬よりさらに例えの分りづらさが悪化してるだろ、それは。
  そしていつもの爽やかスマイル。しかしこういう話を聞いてしまうと、こいつをただ胡散臭いとかむかつくとか
 鬱陶しいとか、思いにくくなってくるってもんだ。聞くんじゃなかった。やれやれだ。
  …今度古めのゲームをハードごと貸してやるべきかね? 新しいやつは妹がやってるから無理だけどな。

元URL:http://www.syu-ta.com/blog/2007/04/13/123352.shtml