669 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/06(水) 21:35:20 ID:MPHVRtFq
バナナで釘がなんたらという言葉が浮かんでくるほど寒い12月のクリスマス・イヴである。
今日は、家にある人物が来客する予定なんだが・・・それにしても遅いな。約束の時間も過ぎている。
とりあえず連絡を取ろうと俺が携帯の画面を開いたとき、ちょうど呼び鈴が鳴り響いた。
「ずいぶん遅かったな、古泉。あと10分遅かったらこのココアはおあずけになってたところだ」
そう、ある人物というのは古泉の事だ。
一瞬でも女だと思って嫉妬した奴は今すぐ手を挙げろ。
安心していいぞ、俺はいつでもお前達の味方だ。
急いで来たのか、息を切らせている古泉にホットココアの入ったカップを渡してやると、
冷えた両手で持ち、温めながら嬉しそうに飲んでいる。
・・・古泉がココアを飲み終えたのを確認し、俺は本題を切り出した。
と、その前に何故俺がせっかくのクリスマス・イヴにこいつを家に招待したのかを説明しておこう。
昨日のSOS団ミーティングの際、朝比奈さんのサンタ姿を見たハルヒの思いつきで、
急遽SOS団内クリスマスパーティーを行う事が決まった。
それぞれ出し物を用意し、明日のパーティーで披露し合う予定なんだが、
さすがに一日で出し物を用意してこいなんて、無茶苦茶な話だと思わないか?
だが、反論したところで結局何も変わらんのは身をもって立証済みなので、こうして古泉を家に招き、
明日の出し物についての作戦会議を行おうというわけなのである。・・・以上説明終わり。
「んで、俺が思いついたのがこれなんだが」
あらかじめ用意しておいたトランプをテーブルの上に置く。
古泉は何かを思案するような仕草を見せたあと、テーブルのトランプを手にとって眺め始めた。
670 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/06(水) 21:36:40 ID:MPHVRtFq
「今から色々用意するのも大変だろ?そこで考えたのがトランプマジックってわけだ」
そう、パーティーを盛り上げる出し物の定番といえば手品だ。
それにトランプマジックなら一日練習するだけで上達できるし、何より材料費が掛からない。
「それじゃ透視マジックから始めるか。古泉、よく見てろよ?」
むかし親父から教えてもらったやり方を思い出しながら、カードを切り混ぜていく。
次に、適当なカードを古泉に選ばせ、それをテーブルに伏させる。
そして胡散臭い呪文を唱えながらカードを透視する「フリ」をする。
「ふむ・・・古泉、お前が選んだのはハートの5だ」
俺がそう告げると、古泉は恐る恐るテーブルのカードに手を伸ばした。
カードをめくると、そこに書かれているのはハートの5。・・・ビンゴだ。
古泉は、信じられないといった感じに口を半開きにしたまま固まっている。
おいおい、超能力者が手品ごときで驚いてていいのか?
先行きに不安を感じながらも、俺はなんとか古泉にマジックを教えていった。
「はぁ・・・正解・・・もういいだろ?」
古泉が俺に透視マジックを披露するのも、もうこれで6回目。
結局覚えさせる事ができたのは透視マジックだけだったが、それでも古泉はご満悦のようで
大げさにカードを透視してはニコニコと笑っている。
まだやり足りないといった感じの古泉ではあったが、これ以上付き合ってたら俺が倒れてしまうので、
有無を言わさずカードとテーブルを片付けた。
「それじゃ明日学校でな。ちゃんと家でも練習しとけよ」
練習会がお開きになる頃には、もうすっかり日も暮れていた。
礼の言葉を並べる古泉に別れを告げ、俺は自室のベッドの上に突っ伏した。
それにしても、パーティーの前日からすっかりクタクタになっちまったな・・・
何故か疲れと共に感じた充実感のようなものを振り払い、俺は部屋の電気を消した。